水素が他の抗酸化物質に比べて脳障害に有効な理由

外傷性脳障害は外部からの刺激(衝撃)によって大脳皮質が損傷され、そこで発生する活性酸素によって障害範囲が広がる。このような現象は心筋梗塞や脳梗塞における『虚血再還流障害』においても同様である。

一度虚血に陥った部位は、その部位に発生する大量の活性酸素やサイトカイン等によって組織損傷が進行し、そこに再還流(血液が再度流れ込む)によって障害が大きくなる。

これに対し、発生する活性酸素(特にヒドロキシラジカル)の制御は大変重要である。

抗酸化治療において、最近になって重要視されているのが『抗酸化の選択性』であろう。

一般に「活性酸素/フリーラジカル」と言われるがすべて悪いものではなく、生理活性物質としての活性酸素も数多く存在する。
*NO(一酸化窒素):血管拡張作用
*H2O2(過酸化水素):免疫細胞内での殺菌作用
等は、生体の作用として大変重要であり、これらの作用を打ち消してしまうことは好ましくはない。

抗酸化治療においては『反応性が強く、組織酸化劣化作用の強い活性酸素を選択的に除去する』という考え方が主流となりつつある。

また、生体が持つ「自前の抗酸化酵素産生能:スーパーオキシドに対するSOD産生、過酸化水素に対するカタラーゼ産生」は、外部からの『SOD様物質』『カタラーゼ用物質』の投与が「過保護要因」として働き、酵素産生能を低下させてしまう可能性もある。

水素が「新しい抗酸化治療戦略」として研究されはじめたのは
*ヒドロキシラジカル選択性
*BBB(脳の血液脳関門)通過性
である。

水素の抗酸化作用が
*生体の抗酸化酵素産生能を邪魔しない
*BBBを通過する(脳細胞に届く)
*抗酸化作用発揮後、酸化物質として残存しない
という利点を持つことが、他の抗酸化物質に比べて優れた部分であろう。

それどころか、この論文では水素による治療が『内因性抗酸化酵素活性を増加させる』ことに注目している。

水素がどのような作用機序で内因性抗酸化酵素(SOD、カタラーゼなど)を増加させるのかについては言及していないが、前出で論文にあるように、水素の遺伝子発現作用が影響しているのかも知れない。

これについても今後の研究が待たれる。

医療法人社団医献会 辻クリニック(四谷/麹町)

Protective effects of hydrogen-rich saline in a r… [J Surg Res. 2012] – PubMed – NCBI
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